自動車学校で基本的な運転技術や交通ルールを学び、免許センターで無事に運転免許を取得したら、いよいよマイカーを手に入れて公道デビューですよ!
教習所のコースや、運転シミュレーターと違って実際の道路には危険がいっぱい!!
でも、買い物やレジャーなど、どこでも自由に行ける魅力こそカーライフの醍醐味だ。
私が免許を取得したのは、高校を卒業して間もない18歳の頃。
ほとんどの人は大体同じ頃に免許を取得するのではないだろうか。
う~ん、しかし随分と歳を取ったものである…(笑)
今日は、峠道で稀に見る”アレ”の話をしよう。
出来ればお世話になりたくはないが、長年運転をしてきた間に一度だけ使った事がある…。
“アレ”をご存知かな?
ここは熊本県阿蘇市。
大分県から熊本県へ向かうルートの1つに、国道57号線(ミルクロード)がある。
緩やかなカーブや長い直線道路が多く、スイスイ走れてしまうのだが、阿蘇市を目前にしてエキサイティングな道路が突然現れる。
それは「滝室坂」だ。
熊本方面から一本クヌギへ遊びに来るお客さんの中には、この道を通ってくる方もいると思いますが、なかなかの急勾配で、急カーブの多い峠道になっている。
そしてその距離、約4km!
わざわざ入口で「エンジンブレーキ使用」と注意を促す程、特に免許を取得して間もない初心者ドライバーにとっては過酷な道路となっている。
この様に急勾配の下り坂で長い距離を走り続ける場合、エンジンブレーキを有効に使わないと、アクセルを踏まなくてもどんどんスピードが上がって行くので大変危険です。
そのため、嫌でもブレーキを踏む回数は増え、ブレーキを緩く、長く踏みっぱなしと言う事も珍しくはない。
この様なシチュエーションで走り続けると何が起こるのか?
それはブレーキのフェード現象やベーパーロック現象(ブレーキの発熱による制動力や油圧の低下)である。
早い話、ブレーキが効かなくなり、減速したくても車はどんどん加速して止まらなくなると言う非常に危険な状態へ陥る可能性があるのだ。
こんな時、緊急回避の方法としては壁やガードレールなどに車体を押し付けて強引に停める方法だったり…と言う事になるのですが、事前にこの様な危険性が予測される様な道路には、安全策として「待避所」が設けられている場合があります。
今時は自動車学校で習うのでしょうか?
この待避所ですが、実は結構珍しい道路の設備で、大分県周辺だとこの滝室坂くらいしか見た事はありませんし、全国的にもどれくらいあるのかわかりませんが、それ程多くはないと思います。
そして何より、最近の車の性能は格段に向上しており、安全基準もより厳しくなっている事から、これくらいの坂で実際にブレーキが効かなくなると言う事は極稀なケースで、余程メンテナンスを怠っているか、ケチって良くわからない安物の粗悪なブレーキパッドを使用していなければまず問題ない。
昔は前後ドラムブレーキなど当たり前の時代で、ブレーキのトラブルが起き易かった背景から待避所が設置されていた様です。
ところで退避所とはどう言ったものなのか?
前方をご覧ください。
ジャンプ台の様に設置された山が見えますね?(笑)
これです(笑)
早い話、サーキットのエスケープゾーンと同じく、ふかふかの砂や土を盛って、そこへ突っ込んだ車を受け止めて停めてしまおうと言う原始的な物です。
サーキットのエスケープゾーンはコースに対してフラットか、緩やかな勾配になっているものが殆どですが、退避所の構造は結構な角度になっていますし、ストライクゾーンは狭い。
コントロールを失っていて軌道修正が困難な場合、ミスをすると枠のガードレールやポール、狙いを外してそのまま林の中へOBと言う可能性もあるので、ヤバいと思ったらなるべくスピードが遅い内に早めに突っ込んでおいた方が良いでしょう。
まあ、先程も言った通り、最近の車だと余程の事がない限り、普通に走っていてブレーキが効かなくなる様な事はないと思いますが…。
それに、GoogleMapsのストリートビューで見てもお気付きの通り、どこか固くてそのまま上ってしまいそうな印象である。
これ、実のところ今時では需要も無いので、本当にカチカチになってしまっていて役に立たないと言う可能性もありそうですが、このエリアに草が生えていない事などを考えると、ちゃんと手入れはされているのかもしれません。
少なくとも、私が過去に突っ込んだ約20年前には、柔らかい砂が盛ってありました。
横から見ると結構良い角度に仕上がってます(笑)
約20年前、私がこれに突っ込んだ経緯をお話ししましょう。
自動車学校の講習中に「こんな退避所が~」と説明されていたのですが、なかなか見掛ける機会は少ないだろうとの話でした。
んで、ある日、友人と夜中に阿蘇の方へ向かっている途中、この退避所に気が付いてしまったと言うわけです!
まさか…?
そう、そのまさかである。
「あれ、自動車学校で言ってたヤツだよな?」
「本当に止まるのかな?」
「試してみる?」
「えー?怖いよ!」
「30km/hくらいなら大丈夫でしょ!」
「いけー!」
…と言った感じで、ブレーキを踏まずに30km/hくらいのスピードで実際に退避所へ進入してみた(笑)
ザザザザザッ!バキバキバキバキーッ!!
「!?」
…止まった。止まったが、何か凄い音がしたぞ?
とりあえず脱出しようとバックギアに入れてアクセルを踏むが、タイヤが空転して全く動けなくなってしまった。
車から降りて押そうとすると、フロントバンパーが無くなっている事に気が付く。
下に巻き込んでフロントタイヤで踏み潰してしまっている様だ。
数人で押しても引いてもビクともしない車。
軽自動車と言えど、砂に埋まってしまった車を人力で動かすのはかなり難しい様である。
流石にこの時代はアンテナを引っ張り出して使う旧式の携帯電話やPHSは普及していたので、この場からJAFを呼ぶ事は出来ましたが、この時に呼んだJAFの方から言われたのを覚えている。
「今時珍しいねー!ここ20年くらいで初めて見たよ!ここに突っ込む人!!」
約20年前に、少なくとも約20年例が無い事故?を起こしてしまった私達…(笑)
ただ、当時の例は車のブレーキが効かなくなったわけではなく、好奇心にブレーキが掛からなくなった事故なので、やはり40年くらい前には、既に滝室坂程度の道でフェードを起こす様な例はかなり少なくなっていたと思われる。
調べてみると、ディスクブレーキが量産型自動車に世界で初めて採用されたのは約60年前、二輪車に採用されたのは約50年前。
その頃から一気に世界に普及していった様で、それに合わせて少々の事で起こるブレーキトラブルは減っていった事が予想されます。
今でも大型車などはドラムブレーキが主流ですし、乗用車でももちろん採用されている車種も多いですが、材質や設計の改善など技術的な進歩も当然あると思うので、昔の様にこの退避所が必要なシチュエーションと言うのはどんどん少なくなっていくでしょう。
段々と、この様な待避所も無くなっていくかもしれませんね。
突っ込んでみるのはお勧めできませんが、もし見掛けたらどんな物なのか是非観察してみてください!